2008年8月31日日曜日

Mumbai to Goa (2)


列車の中では
たくさんの売り子たちが往復をしていた。


チャイ、揚げ物、祈り(売り物なのか?)
カレー、野菜、ジュース


狭い通路を行ったりきたり
5分に1回は売り込みがある。


その中で、際立っていたのが
チャイを売る一人の青年だった。


チャイはバケツのような保温ビンで
運ばれ、頼めば蛇口をひねって紙コップに注がれる。
一杯10ルピー(30円弱)の商売だ。


雨季の社内は風も冷たく
時々飲むチャイが熱くてとても美味い。
また、飲んでいる時にはホッとするのか
近くのインド人とも会話が弾むことが多かった。


「チャーイ、チャーイ、チャーイ」と
繰り返し車内に響く声は太く、しゃがれ
実際は「ジャーイ、ジャーイ」という音に近い。


保温ビンは重そうで、彼の右腕には血管が浮き出ており
重心のバランスを保つために少し体を傾けながら歩いていた。
狭くて揺れる車内では持ち運ぶのも大変だ。


朝6時半に出発して、
9時になっても、
正午をまわっても
夕方になっても、
暗くなっても
彼は休み無くチャイを売り続けていた。


夕方を過ぎた頃には、
声も小さく、足取りも重く なり
疲労の色が明らかに見てとれる。
それでも彼は、最初と同じ姿勢と態度でチャイを売り続ける。


心の底で一人深い感動をしていた。
決して快適とは言えない列車の旅だが
身を削って、チャイを売ってもらえる機会を
彼に提供してもらえていることに、感謝と尊敬の念が湧いていた。


終盤はもう応援に近い目で彼を見つめ、
チャンスがあれば彼から買うことにしていた。


働くって一体何だろうと、
悶々と考えていた。


彼が選んだ道だろうが、
こんなに過酷な重労働は日本では絶対にあり得ない。
闇にあったとしても労基法に抵触してしまう。
インドでは表立っての仕事だ。


自分は日本という条件の整った好環境に生まれ
未熟ながら仕事をさせていただいている。
インドの列車の中で、朝から晩まで歩きながらチャイを
売る彼と自分を分けたもの、それは一体何なのだろうか。


彼は間違いなく、チャイを通してお客さんを幸せにしている。
それも力いっぱい生命を燃やしながらのように感じられた。


私の生命は何のためにあるのだろうか。
どう燃やしていったら、世の中に役立つのだろうか。


役目やミッションがあるとしたらそれは何かを、
車内で一人考えていた。


旅を終えた今でも、日々考え続けている。
ムンバイからゴアまでの列車の中の貴重な経験であった。